かつての当館を知る,懐かしい大先輩に本を頂きました.『懐かしい』といっても私の生まれるずっと前のお話し...
「吾妻さんが相川の羽田町にあった頃に羽茂から出張で1週間くらい滞在することがあってねぇ,だんだん日数を重ねると下着が足りなくなるんだよ(笑)」当時は島内各所から合同庁舎や税務署などがある相川へ泊りがけで仕事にいらっしゃる方も少なくなかったのでございます.
「それでパンツを洗って干しとくんだけど私もまだ若かったから恥ずかしくてねぇ,隠すように部屋の隅に干しといたの.そうしたら年配の仲居さんがね,”そんなとこに干しとかんでも皆さんやっとるように軒下に干せっちゃ”と,指さすほうを見るとね,見事に並んでたのよ宿泊客のパンツが(笑)」
「当時長野からの学生さん達が泊まってて彼らのパンツの横に私のも下げといたの.そしたら学生さん達なんか急に帰ることになって急いで準備したんだろうね,私のパンツも一緒に持って行っちゃった.それからパンツ盗まれたーって大騒ぎ(笑)一部残ってた学生さんが”すみませんすみません”って平謝りでね.それでさぁ,衣料券くれてねぇ.衣料券なんてお嬢さん(=これ私のことです)知らないでしょ,戦争中は配給制だから食料も衣料も券がないと購入できないの」
「いやぁ~それにしても懐かしいなぁ~」ととても素敵な笑顔でお話ししてくださり,この後もまだまだ『懐かし面白エピソード』は続いたのでございます.
御年92歳の藤井様より頂いたこの2冊,これから楽しみに読ませていただきます.『ブック・リヴュー』のタイトルに偽りあり(笑).読後感想はまた後日,ということで,パンツにまつわる戦時中のお話でございました.
戦争中とはいえ,旅館はごく普通の日常の風景を映しだしていたのでございます.