相川商工会婦人部の講習会に参加させて頂きました.
今回の講師は佐渡西警察署署長・島田啓介様です.島田様は2004/10/23の中越地震の際,県警機動隊の隊長として活動された方です.ご本人も地震の際は長岡の御親戚のところで“夕食でも一緒に食べていかんか”と誘われているところへ突然の大きな揺れ,これは大変だと奥さんを伴いすぐに新潟へと戻り,またその足ですぐに山古志村へと飛んだそうです.
山古志村の中学校のグラウンドへ降り立った時の驚きは想像を絶するものだったそうです.ただ,長島村長指揮の下,寸断された道路を歩いて役場職員が被害状況を把握しようと懸命に情報を集めており,島田署長は村長の指導力と吏員の行動力にたまげたと仰っておりました.
その後自衛隊と協力してより多くの人を避難させなければと輸送用飛行機はフル稼働.
ところが日暮れとなり明かりのないグラウンドへの着陸が困難ということで救出作業の打ち切り命令が出されました.
輸送はあと一回だけ.最後の機に乗れるのは20名.誰が最後の20名を選ぶのか.
長島村長は「私が責任を持ちます.任せて下さい.」と立ち上がりグラウンドへと向かったのでした.
しかし,村長がなかなか戻ってこないので島田署長は心配になり現場へ行ってみると,グラウンドの周りはなんと明かりが煌々と照らされ,夜間の救出作業が行われていたそうです.村の青年達が「お年寄り・女性・子供だけでも何とか今日中に避難所へ連れて行って下さい」と,工事現場に使うハロゲンをグラウンドに照らし夜間飛行を可能にしたのです.
人間の力,人が人を思う強さ,人間ってすばらしいと改めて感じる「命のはなし」をお聞かせ頂きました.
その後署長は,報道でもご存じの方が多いと思いますが,土砂崩れに巻き込まれたワゴン車から皆川真優ちゃんを一刻も早く遺族の元へ返してあげなければと,遺体の収容作業に向かいました.まだまだ安全とは言えない現場ではちょっとのミスが大惨事につながるという緊迫した中での作業だったそうです.
午前6時過ぎに始まった作業は,午後3時23分,ようやく真優ちゃんを土砂の中から運び出すことができ終了.亡骸に用意してきたお線香・お菓子・ジュースを供え,長岡の生花店で買い求めた花束を供えようとしたところ,署長は思わず「誰だァッこの花束用意したのはッ」と叫んだそうです.その花はなんと“花嫁さんのブーケ”だったのです.
一人の隊員が「私であります.実は花屋のご主人が『真優ちゃんに供えるんならちょっと待ってて』とこれを渡して下さいました.」花屋のご主人はお金も受け取らずに,天国で真優ちゃんが可愛らしい花嫁さんになれますようにと素敵なブーケを作って下さったのでした.隊員全員でその花束を供え合掌.署長は暫く頭を上げることができなかったと言います.
今こうしてこの文を書いているだけでも目頭が熱くなります.人が人を思う優しさ,暖かさを実感致しました.こんな素敵なおはなしをお聞かせ下さった島田署長に感謝です.
あらためて中越地震でお亡くなりになった方々のご冥福をお祈り致します.