便利な世の中になりました ~iTunes Music Store Japan 開店~

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[Aug,22,2005, 加筆]

待望の日本版iTunes Music Store(以下iTMS)がオープンしました.洋楽中心に聴くものには,曲揃えにチョい物足りなさを感じるというのが率直な意見です.自分は以前から米国版iTMS用のプリペイド・カードを利用しています(日本店のオープン記念に「ウルフルズ」はダウンロードしました).

それにしても便利な世の中です.僻地人にとって,家に居ながらにして音楽が買える – しかも試聴をして – などというのはとても贅沢な行為です.iTMSは検索性が非常に高いので,お目当ての曲がかなり時代がかったものでも「あるものはある」わけで,あった場合は当然バシッとヒットして非常にシビれます.また「メロディーは覚えてるけどタイトルは何だったっけ?」というようなときも,一曲一曲試聴しながらお目当ての曲を探し当てることが可能です.

聴くジャンルは特に決めていませんのでかなり節操がありません.ポップ有り,ロック有り,ブルーズ有り,ソウル有り,ジャズ有り,クラシカル有り,ブラジリアン有りです.直近の3日間,iTMS(米国版)からひっぱってきた曲を羅列してみます.

Shakey Ground / Phoebe Snow (1976)
Coyote / Joni Mitchell (1976)
You’re Beautiful / James Blunt (2005)
You’ll Never Find Another Love Like Mine / Lou Rawls (1976)
How Sweet It Is To Be Loved By You / Marvin Gaye (1966)
Capim / Manhattan Transfer (1987)
Baby Come Back [Remix] / Player (2005)
L-L-Love / Blondfire (2005)
You Ought To Know / Alanis Morissette (2005)
Mississippi Girl / Faith Hill (2005)
Biggest Part Of Me / Take 6 (1994)
You Can’t Get What You Want / Joe Jackson (1984)
Cinnamon Park / Jill Sobule (2004)
Sukiyaki / Greg McDonald (1998)
Can We Still Be Friends [Live In Japan] / Todd Rundgren (1978)

最近ある方から1977年の大晦日にNHKが放送した”The 3rd Annual Rock Music Awards (NBC)”の録画を見せてもらいすごく感動したのですが,その中のノミネイションを探して買ったというのがこの3日間の傾向です.それに加えて,定期「購聴」しているポッドキャスト(これについては後日,項を改めて書きたいと思います)の一つ”iTunes New Music Tuesday”で紹介された曲の中でいいなと思ったのを買っていることが,今並べてて分かりました.ポッドキャストは,私のような素直に影響を受けやすい人間に対してはかなり効果的な宣伝媒体となりそうです.

「アルバム単位で聴く」というのが,かつての音楽ファンの基本的なスタンスだったと思います.それを裏付けるかどうか分かりませんが,シングル・カットの寄せ集めであるベスト盤が音楽ファンによって名盤とされることは少なかったと思います.でもアルバムの中にはあまり好きではない曲もあるわけで,LPの時代,それをトバすことはかなり困難でした.

CDの時代に入ってプレイヤーの操作性が格段に高まり簡単に選曲ができるようになったお陰で,購入したアルバムの中には「半永久的に聴かない曲」というのがでてきました.

iTunes やiPodの時代は「そもそも聴かない曲は買わない」時代と言えるでしょう.The Dark Side Of The Moon (Pink Floyd)やSgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band (Beatles)のようなコンセプチュアル・アルバムはもう出現しないのかも知れません.

「ジャケ買い」する楽しみも,iTMSの場合はないわけですね.でも,代替物をちゃんと用意してくれてあります.再生中のアートワークを表示するiTunesやiPodの機能は本当に楽しいです. iTMSで購入したものの多くにはLPサイズの特大アートワークがついてきますが,自分でCDライブラリーをエンコした場合は,Amazonなどで見つけてはひとつひとつコピペしていく単純作業が待ち受けています.これにハマっている方も多いのではないでしょうか.

いずれにしましても, iTMSには何か新しい可能性を感じます.残念なのは,冒頭にも述べましたが,版元との契約関係からか購入できるものに限りがあることです.SMEが iTMSに楽曲を卸さないのは,既にMoraやbitmusic等のネット配信会社を設立し,iTMSとは競合関係にあるからという事情もわかります.さらにその上位レベルでは,iPodとWalkmanの覇権争いがあることもみんなが知っています.業界標準の圧縮形式を無視して独自形式を編み出し他の端末では聞けないようしたり,CD-Rへのコピーを出来なくしたり強烈に制限する行為から見えてくるのは「自分のところの都合」です.「良い音楽を広くみんなに聴いてもらう」という視座に思いっきし欠けているのではないでしょうか.音楽リスナーの裾野が広がっていくことが音楽業界全体の繁栄に繋がることを,今回iTMSに楽曲を提供しない版元さんに強く訴えたい気持ちです.我々音楽ファンの意見を取り入れる形でiTMSが発展してくれればと期待する次第です.

iTMSへの要望をあと一つだけ…

ASCII24.com が実施したアンケート「アキバで50人に聞きました!【音楽のダウンロードサービスを利用したことがありますか?】」で判明した「ダウンロード・サービスを利用したことがないという人が圧倒的に多い」という結果ですが,理由として挙げられたのが「決済などが面倒そう」「音が悪そう」というネガティブ・イメージ,また「音楽はジャケットも含めて購入している」という回答も多く,“所有感”が重要という傾向が見られたとのことでした.

所有感の重要性は確かに分かりますし,また「CDはCDプレイヤーにかけて聴きたい」という人も多いでしょう.さらに,5.1ch サラウンド再生など,iTunesやiPodが対応していない場合は今後もCDやDVDなどの物理メディアを所有することになると思います.

iTMSの決済は決して面倒ではありません.クレジット・カードをもってる人はそれを使えばいいですし,買いすぎてしまうことを心配するようでしたらプリペイド・カードやギフト・カードなどで金額の上限を設ける形もとることができます.

問題は「音が悪そう」というイメージを持っている人が多いことです.これ,実は「その通り」でして,「音の良さをも含めて音楽鑑賞だ」という方には音楽のダウンロード購入は「ん~~~っ」でしょう.「AACはMP3より高音質だ」と言われても,やっぱり「ん~~~っ」でしょうね.LP時代の国内盤と輸入盤の「出来」を比較しても分かりますが,日本人はそもそも音質(というか盤そのもののクオリティー)にこだわってきました.また,音楽携帯端末用としてShureのE4Cなどの高級イヤフォンが売れまくっているのも日本ならではです.

そこで,なんですが…

Apple Lossless形式での配信はファイルの容量の点(=デカ過ぎ)で難しいかも知れませんので,AACでしたら,192bps,256bps, 320bpsなど,現状の128bps より高いビットレートのものも選択購入できるようになれば「こだわりの日本人」にも受け容れられやすくなるのではないかと思います.是非ご一考下さい, iTMSさん!

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